言語や性別を越えて心を通わす作品を作りたい

—ディレクター業とアート活動の二足のわらじで活動されてますね。
中学高校が私にとって地獄だったんです。人と折り合うのが苦手で、毎日がきつかった。今思うと子供だっただけかもしれない。その頃、詩や写真を始めて、作品を介して人と繋がるほうが自分にはしっくりくるなって気づきました。映画というコミュニケーションにもすごく救われた。それで映像を作りたいと思うようになりました。
武蔵野美術大学に入って、表現手法に捉われない制作を心がけるようになり、その中でBESSOというアートグループを立ち上げ、アーティスト兼キュレーターとして活動しています。

—そんな中挑戦してみたいお仕事はありますか？
私、女の子の表現が得意なんです。女子校だったのもあって、女の子の微妙な気持ちや繊細な変化を感じ取るのが得意なので、そういう視点でグッとくるビューティー系をやってみたい。ブランドのフィロソフィーに共感してもらえる表現に挑戦したいです。
あとは、映画好きなので、ショートフィルムを撮りたいです。実は、ずっと書き続けている話があります。また、ファッションブランドをTOKYOでローンチします！映像業界の人が撮影で着れるおしゃれな作業着がテーマで、ガシガシ使えて、洗えて、かっこいいものを提案する予定です。

小さな笑いのあるストーリーものに挑戦したい！

—映像演出の道に進んだきっかけは？
ミシェル・ゴンドリーの映画「僕らのミライへ逆回転」を見たときに、ガラクタや身近なもので映像を作っていく様子が描かれているのですが、夢を与える仕事とその裏側の泥臭さのギャップにやられました。企画や話を考える時間が好きで、ストーリーのあるシリーズものを演出するのが目標です。

—演出という仕事の中で、どのような素敵な発見がありましたか？
カメラマンが予想外なアングルを切ったときに、登場人物の新たな性格や背景が見えて来る瞬間や、MA時にSE をいれるタイミングを少し変えるだけで、目線のいく順番が変わったり、想定外のモノが現れる瞬間が大好きです。各分野でのプロの力が合わさって、自分の範疇を超えた表現が生まれる面白さを日々実感しています。スタッフの方にも積極的に意見を聞いて、相談するように心がけています。

—その他、人生に影響を及ぼしたコンテンツを教えてください。
「爆笑問題カーボーイ」というラジオを愛聴していて、名物コーナー"CD田中" は自分の人生に少なからず影響していると思います。

—今後の目標を教えてください。
日常の中の違和感や小さく笑える瞬間を大切に感じ取り、それらを丁寧に映像で描いていきたいです。仕事以外では、インドで寺院巡りをしたいです！

自分に素直でありたい、面白いことに素直でありたい

—今年TOKYO に転職されましたが、そのきっかけは？
前職のCM制作で、TOKYOの谷川（英司）さんと仕事をしたのがきっかけです。谷川さんと会話を重ねていくうちに、自分がやりたいことが映像に留まらず、TOKYOではそういった挑戦ができそうだと思ったのと、チームの雰囲気が楽しそうだったので、転職を決めました。

—上野さんってどんなキャラクターですか？
行動力、ミーハー度合い、コミュニティー力が自分の持ち味だと思っています。

—人生で影響を受けたものは？
井上雄彦の漫画「SLAM DUNK」や「バガボンド」。セリフの一つひとつにグッときます。あと、木梨憲武さんの「 面白いと思ったことをただやっている」という言葉に感銘を受け、常に自分に、面白いと思うことに素直でありたいと思っています。Rama Allen（ラマ・アレン/Mill.labのディレクター）さんも、やりたいことに素直で行動力がある人で、いい作品を作るんです。細かく考えすぎてる自分がアホらしくなると言いますか…。

—上野さんのプロデューサー論を聞かせて下さい！
頭の回転の早さ、柔らかさ。そして図々しさ。良いものを良いと言える自分でいることが大事と考えます。「上野に頼めば面白いものにしてくれる」と言われるプロデューサーになりたいですね。現在、地道に英語を勉強中。

好きなものはジョジョシリーズとラジオ、慎重派P

—プロデューサーを目指したのは大学時代の経験に基づいているそうですね。
子どものワークショップでまとめ役をやって、手応えを感じたことがきっかけです。皆の意見を織り交ぜ、やるべきことを割り振り、問題について話し合い、父兄たちと折衝する。様々な価値観や才能が集結してより精度の高いものに仕上がるのが新鮮で、こういう職業を探して制作業務にたどり着きました。
当時、太陽企画には、ひとつの建物の中に、演出部、編集室、MA室、美術工房、CG部がある環境に魅力を感じました。実際、スピーディーにあらゆるテストが出来るので、新しいアイデアや方法が生まれ実行しやすい環境だと思っています。

—プロデューサーとして目指しているものを教えてください。
無駄な作業、時間やストレスを減らし、関わる誰もが本来の力を出せるような環境創り。「知ることは自由になること」、一歩踏み込んで知識や仕組み、相手の気持ちを知ると、動ける範囲が広くなったり、別の方法が浮かんだりします。私は石橋を叩いて渡るタイプなので豪快なプロデューサーに憧れますが、やはり丁寧で注意深い仕事を追求していくと思います。

—体力勝負な現場ですが、気をつけていることは？
ランとヨガをやっていて、泳ぐのも大好きです。健康管理には気をつけています。